音楽レーベルとしての活動やアーティストとのコラボレーションなど、インディペンデントでありながら着実に東京のストリートカルチャーシーンにて存在感を増しているtokyovitamin。そんな彼らの物語はアメリカ育ちのVickが東京へ帰国したことから始まる。
「アメリカで生まれ育って、日本へ戻ってきたときに出会った仲間たちと今もずっと一緒に活動しています。元々音楽で何かクリエイティブなことを絶対やりたいと思っていて、大学に1年だけ行って辞めたタイミングで、やるなら今しかないと。ダメでも良いからやってみたいと思ったんです。同じ考えの友達と出会えて、周りにそういう仲間がいるから今もこうやって続けられている気がします。あのときに始めて良かったと毎日思いますね」
そんなVickの声掛けにより生まれたtokyovitaminは、メンバーが固定されたチームというよりは、様々な人が出入りし流動的にアウトプットする自由さが魅力のひとつだ。
「メディアに呼ばれる時とかに名前があった方が分かりやすいし便利かなぐらいの気持ちでフワッと考えていて、tokyovitaminと名付けました。自分もそうなんですけど、インターナショナルなバックグラウンドを持っている仲間が多くて。そんな自分たちのこれまでの経験を活かして東京と世界を繋げることを目標にしています」。
tokyovitaminの活動は、音楽以外にアパレルのグッズ販売を積極的に行っているのも特徴のひとつ。Vickがファッションに興味を持ち始めたのは、中学生の頃だという。当時は「A BATHING APE®」のショップへ行き、アパレルだけでなく内装など様々なものに惹かれた。そして、同ブランドをはじめとした裏原カルチャーがその後の彼のクリエイティブにおけるインスピレーション源にもなっていく。
「アメリカにいた頃、自分や周りの友達の好きなラッパーやミュージシャンたちが日本のブランドを着ているのを見て、勝手に誇りというか嬉しい気持ちになったんです。それで、自分も同じ日本人だから、いつかそういう人たちと一緒に何かできたら良いなと思っていました。日本とアメリカ、別の国でも、日本国内でも別の地域とか、バックグラウンドの違うものが混ざり合うことが楽しくて面白いんです。今の自分の活動でも常に心掛けていることのひとつですね」。
同じ裏原カルチャー好きと原宿で行うアートエキシビジョン。
Vickのさらに下の世代でありながら裏原カルチャーにリスペクトを持ち、同じような志を持つアーティストたちがいる。それが今回Dr. Martens SHOWROOM TYOにて開催中のアートエキシビジョン『tokyovitamin ART EXHIBITION (FAME)』を一緒に行なっているヒップホップユニット、Bleecker Chromeだ。
「去年tokyovitaminからリリースした『Vitamin Yellow』というコンピレーションアルバムの中で、Bleecker Chromeと制作した「FAME」という曲があるんですけど、その曲をテーマにこの展示をやりました。彼らの周りにはスタイリストやフォトグラファー、グラフィックデザイナーなど既に若い世代でクリエイティブなコミュニティができていて、今回の展示でもそれを感じてもらえると思っています。もちろん、自分たちもBleecker Chromeにとっても、Dr. Martensと一緒にできるということはすごく光栄なことです。ファッションアイテムとしても認知されていて、カルチャー好きな人はみんな知っているし。店内にある歴代のコラボレーションモデルを展示したアーカイブタワーがあるように、こうやってたくさんの人やブランドとコラボレーションもしていて、歴史を感じるのと同時にとてもリスペクトしています」。
共鳴するtokyovitaminとDr. Martens。
VickがDr. Martensと出会ったのはニューヨーク時代。厳しい寒さの冬に耐える機能とファッション性を兼ねていることから愛用していたという。そして、Dr. Martensといえば真っ先に頭に思い浮かぶのが音楽。昔、アメリカで読んでいた音楽雑誌に載っていたブランドの広告なども強く印象に残っているという。
Vickの表現活動において、やはり音楽は最も重要なファクター。ファッションブランドと一緒にプロジェクトを行う場合でも、常に何かしら音楽と紐付けて活動をしてきた。そんな彼だからこそ、tokyovitaminの表現活動と常に音楽と寄り添ってきたDr. Martensのアイデンティティは共鳴する。
「今は音楽レーベルとして活動を続けていくことを大切にしたいです。他にも好きなものが色々あるので、新しいことにもチャレンジしますが、あくまで音楽がベース。コロナの影響でなかなか難しかったですけど、海外からまた様々な人が来れるようになったら、自分たちのやりたいことをさらに発揮できると思っているので、これからが楽しみです」。